ミャンマーZ村のミンウーさん学校で2019年春から日本語を学びはじめ、3ヶ月の日本訪問研修を経て、引き続きミャンマー国内で勉強と仕事(Jimichi Myanmar)に励んでいた、Aung Ko Lat(通称:あんこ君=本名の発音がアゥンコーラッ)さんが、やっと来日を果たしました!
昨年11月より語学学校に通いはじめました。
あんこ君は、支援先のココナッツオイルの村出身。ミャンマーの大学に通いながらJimichi Myanmarの仕事をしつつ、日本での学習を目指して日本語研修に挑戦していました。
ここで少し、ミャンマーの教育事情についてご紹介しながら、あんこ君をご紹介したいと思います。
ネットなどで検索できるミャンマーの教育システムについて公開されている情報は「目指している方向」かもしれませんが、まだまだ移行期です。
ざっくり言えば、11年制だった義務教育+高等教育(日本の高校まで)を国際基準に合わせて?12年制にする改革中ですが、混乱も見られます。
近年、日本での学習や労働を目指す若者が増加しています。こうした背景がミャンマーの教育改革に影響があるかどうかは分かりませんが、例えば日本留学なら、日本の大学や専門学校の入学要件として、母国で12年の教育が求められます。就労の査証を取得するにも、学歴により得られるビザの種類が限られます。
例えば、一昨年、外国人労働者の受け入れに制定された就労ビザ。日本は学歴要件問わずとありますが、二国間協定ではミャンマー側の政策もあって、大卒か政府機関が認可した教育・人材紹介機関を通じなければ海外就労は許可しないという事情があります。
そのため、一部を除くほとんどの若者は要件を満たす事が難しく、高額な教育/人材紹介機関に頼らざるを得ないのが実情のようです。チャンスを求める多くの若者は、借金をしたり虚偽の書類を作成したり、悪徳な業者を介して安易に外国に出稼ぎに行き、不幸な道を歩んでしまうといった事が後を絶たないのです。
従って、わが国日本に次々にやってくるミャンマー人ひとり一人が抱える問題も目的も複雑です。強い意志と情熱を持って勉強し、日本の社会に貢献もしながら学び、目標とするものを得て母国に役立てるという志をもっている人(=我々がどうぞ来てくださいと言いたくなるような人)がどのくらいいるか、が疑問です。
教育の話に戻りますが、問題はそれだけではありません。
近年、ミャンマーの教育改革の一環として「遠隔地学習」の大学が地方にたくさん作られました。教育機会を与えられる精一杯なのかもしれませんが、その内容が問題です。
あんこ君はまさにそうした移行期の狭間で遠隔地学習の大学生でした。遠隔地学習は1年間授業はほとんどなく、昇級試験だけのための講座が数回開かれ、実際に大学に通うのは正味1カ月にも満たないのが実情です。
更にその講座の予習?先生が有料私塾を開設するなど、学生達も自分達がおかれた状況を理解できていません。あんこ君がそれに気づき、自分の人生に対する責任を取ろうと決めたのは、卒業を目の前に控えた頃でした。数か月先に講座を数日受けて試験を受けたら卒業…という。
私達が受け入れ、日本の学校に行く準備をするには時間を要し、タイミングもあります。今がチャンスという時しか受け入れはできません。その時期が、あんこ君にとっては二者択一となってしまいました。
あんこ君は幼少時に父親を亡くしており、お兄さんは家族があるので、実質あんこ君がお母さんと弟を支えてました。
遠隔で日本語学校の入試を受けるあんこ
昨年、ほんの1,2か月間、ビザ発給と渡航が可能になり、逃さず申請しましたが、そこでお兄さんが急死してしまいました。
今、私達と日本で頑張っている2名のミャンマー人もそれぞれ非常に困難な背景がありましたが、このあんこ君も数々の苦難を乗り越えて覚悟を決めての来日となりました。
日本人なら、ここでつい、「じゃあ、あんこ君の夢・目標は何なの?何がしたいの?」と聞きたくなります。
日本で「好き嫌いではなく辛い事でも目の前の事を頑張り、精一杯生き、何か人の役に立てる事をやり、いつの日か自分に満足できたと思える人生にしたい」という事が、夢でも目標でもなくなったのは、いつからなのでしょうか。
私達が関わってきたミャンマー人の目標や夢は「生き方」であり、職業ではありません。それは、私達が忘れ去った人間として見習うべき姿ではないかと思いますし、またセアロが伝え私達が実践していることでもあります。
私達が受け入れるのは、目指す自分の理想像が、人々のために役立つ自分である事を強く望んでいる若者です。応援することにより、ミャンマーへの貢献につながると思い、こうした支援事業を行っています。
あんこ君も山地のセンターで社会生活を体験しながら日本語を学び、陽月堂の事業も手伝いながら頑張っています。
<番外編>
あんこ君の先輩、セアロNPOのミャンマー人第1号のウィンさんが、この度、非常にハードルが高い「高度人材」という資格のビザを取得しました。全国のミャンマー人で経営・管理関連の高度人材ビザで日本にいる人は現在いません。快挙!!