2014年6月26日木曜日

川村義肢㈱様、社内見学~義手完成まで

ミャンマーで長らくボランティアスタッフとして事業活動に関わってきた仲間(ミンウーさん)が、5月~、CEALOグローバル・ハーモニー・ジャパンの関係NPO法人の招へいにより、事業参加のため来日しています。

長年、この彼の義手を何とかしてあげたいと思ってきましたが、このたびの3か月来日滞在により、そのチャンスが巡ってきました。彼は十代の頃、感電による事故で右腕肘下を切断していますが、地元で唯一義手を作ってくれる方に20代になってやっと木とプラスチックで作った義手を手にいれました。
見た目だけではなく、肘が残っているにもかかわらず機能的にほとんど腕を曲げられない義手だったことから右腕を使うことも少なく、腕の筋肉もやせ細っています。

来日を機会に、一度、日本の義肢技術がどのようなものか、見に行ってみよう!と誘い、大阪にある川村義肢㈱様が実施している見学ツアーに申込みました。








5月末、大阪の本社を訪れ、担当の方が、丁寧にスライドや工場で説明をしてくださり、実際に技術者の方々がお仕事をしている様子を間近に見せて頂きました。技術もさることながら、日本企業をミャンマーからの訪問者に見学してもらうにあたり、一番有難い、よかったと感じたことは、川村義肢㈱さまの社風、社内の空気でした。
会社内、工場内どこでどなたにお会いしても、社員の皆さんが元気に笑顔で挨拶をされておられ、「仕事は楽しいもの、自分の誇りであるもの」、と普段、東南アジアの仲間に伝えている自分たちとしては、非常にありがたいお手本を見せて頂いたような会社でした。
また、工場で皆さんが働かれている横で、打ち合わせをされている様子の社長さんにお会いしましたが、社長さんも、見学の我々に笑顔で大きな声で挨拶をしておられ、これもまた、「リーダーは、働く人と共に働き、一番に手本を示せる人間でなければ」、と常日頃話をしていましたので、訪問したミャンマー人も、日本企業、技術がなぜ素晴らしいかを実感したと感想を述べていました。

見学を終え、仲間の『手』を作って頂くなら、この会社しかない!と思い、その場で「手を作ってください!」と直談判…。後に気付いたことですが、日本では当然義手などは医療機関、つまりお医者さんを通じて作られるもので、このようにメーカーさんに直接きて作ってくれ、という客はいないということ…。アポもなく、いきなり手を作れとの申し出にその場で応じて下さったのも、今思えばこの会社だったからこそなのかもしれません。

技術担当の方が対応して下さり、通常は営業を通じて行うべきところもお時間を取ってくださり対応して下さったのだと思います。これまでの事情や希望、我々の期限や予算も限られていることを伝え、いろいろと相談に乗ってくださり、型どり~発注までをその日のうちに終えることができました。半日かかりましたが、大阪まで来た甲斐があった1日でした。

それから1か月…。担当の方から義手が出来上がったという連絡を受け、合わせてみるために再度大阪へ。通常は、こんな風に直接技術者の方とやり取りもしないでしょうから、時間も要し、何度か調整も行いながら完成するのだと思います。度重なるご配慮に本当に感謝しかありません。

日程を調整し、滞在先の広島でミンウーさんと待ち合わせて大阪へ!一度訪問した場所とはいえ、ナビも途中で消えてしまい、道が分からなくなってしまいました。「この辺だったかなぁ~~」と、ハンドルを切ると、なんと、植栽の緑の中に翻るミャンマー国旗が!!「あれ!!ミャンマーの国旗じゃない?あそこだよ、きっと」。

なんと、我々たった3名が勝手な注文をして受取に伺うのに対し、国旗、社旗に、ミャンマーの国旗を掲揚して礼を尽くしてくださっていました。さりげなく誠意を表す、という姿勢に感服です。
ミャンマー人2名は喜んで、何度もカメラを向け、旗がなびくタイミングを捕まえようとバチバチと撮影していました。
日本人としてありがたく、心の中で、これこそが日本の誇りであると一番感激していたのは、実は自分ではないかと思います。

いよいよミンウーさんの「手」とご対面。普段おとなしく、冷静であまり感情を表に出すこともない彼が、満面の笑顔を浮かべて顔を赤くしていました。日本人の手指の形、色とはずいぶん異なることや、身長も高く手が長いこと、そして通常以上にやせ細った腕と骨ばった肘など、一人ひとり違うその人の体の一部を作るということは、大変なお仕事なのだなとつくづく思います。

ぴったり合ったサイズ、そして肘を曲げて使えるように考えられた義手。はめたり外したりにもコツが必要です。出し入れ時に痛む箇所を広げる微調整や、補助ベルトを合わせて取り付けたりと、何度も工場に戻られて数時間かけ、今回もまた1日のうちに調整してくださいました。

何度もじーっと手を見つめ、自分の手と並べ、いいですね、いいです、と嬉しそうにしている様子を見ると、あぁ、よかったな、と、言葉になりません。
そして、一番、彼にとって大事な「合掌」。ばっちりです!私は、今回の彼とのやり取りの中で、仏教徒の彼として大切にしたいもの、それが故の辛さやこだわりを深く知ることができました。彼とのご縁も、孤児院や障碍者施設、村や研修活動に関わり手伝いをするようになって10年。もっと大変な人たちの為にと共に汗を流してきましたが、やっと彼の番が巡ってきました。本件に関しまして、ご協力頂いた皆さま、ありがとうございます。

川村義肢㈱の松本様、本当にありがとうございました。